Q4 原料は単身では釉薬にならないのか?
A なる物もあります。その代表が、土灰です。
釉薬のはじまりは、燃料の樹木の灰が器に積って、さらに溶けて固まったもの(自然釉)です。
長石にも単身で釉薬になるものがあります。長石は釉薬の基本のような鉱物で、ガラスの素ともいえます。
志野釉は、ほとんどが長石で出来ています。
陶石や黄土など、その他にもいくつかあります。

 

Q5 では、なぜ単身で釉薬になるのか?
A 前にも少しふれましたが、天然の鉱物は、いろいろな成分からなる物質だからです。
例えば土灰ですが。灰のもとの樹木は地中の成分を吸い上げて大きくなります。
したがって樹木の灰には,もともと地中に含まれていたシリカ・アルカリ・アルミナが残っており、
その比率がちょうど釉薬になるものなのです。
しかし、土灰単身では、アルカリ分が多くシリカやアルミナ成分が少ないため流れ易く安定しない釉になってしまいます。
(通常それを補うために長石などを加えたります)
いっぽう長石は、65%〜80%がシリカで出来ているため、
あまり溶けなかったり(シリカは溶解温度が高い)粘りがなくヒビや気泡が出来やすかったりします。
そういった特徴をいかしたのが志野釉なのです。

 

Q6 調合はどういう考え方でするのか?
A 通常、粘土は1250度くらいで焼成するとガラス化して陶器になります。
ですから、釉薬の溶解点もそのくらいの温度帯で丁度良く溶けるように原料を調合します。
では、具体的な例を見てみましょう。

 

例1
透明釉石灰釉(なるべく無色で貫入の少ない釉薬

シリカ

固める

長石70% ベースのなる原料

アルカリ

溶かす

石灰30% 主成分がカルシウムで他の成分があまり混ざってないため、きれいで貫入も入り難い

アルミナ

粘る

カオリン5% アルミナを30%〜40%、シリカを40%〜50%含む。長石と石灰だけでも透明釉になるが、より安定した釉薬にするためツナギ役目で少し加える

例2
土灰釉(少し味のある透明釉。酸化焼成で少し黄色、還元焼成では少し青みが出る感じ)

シリカ

固める  

長石80% ベースになる原料

アルカり 

溶かす

土灰20% カルシウム分を多く含むが、他にもアルカリ分やシリカ分、鉄分などを含むため味のある釉調になる。還元焼成で青くなるのは、鉄分の影響。土灰青磁とも呼ばれ、青磁はこの現象をより高度に表現したものです

アルミナ

粘る

なし   

例3
マット釉(完全に不透明な釉薬から、下絵付けが表現できる程度のマット釉まで様々ある)
釉薬をマット(不透明)にする方法はいくつかあります。それぞれの方法でマット 感や特徴が違うので、自分の表現したい技法や質感にあったものを選びます。
主な方法

1  乳濁又は結晶がおこりやすい
  アルカリ類(マグネサイト・バリウム等)
   をつかって溶かす。

白マット釉

珪石20
長石50
石灰15
カオリン3
マグネサイト7

2  シリカ系の珪石や藁灰など
   を使って乳濁させる。
卯の斑釉

長石40
藁灰10
土灰30
藁灰(焼7

3 不完全な溶け方をさせ、
 気泡や貫入によりマットにする。
長石釉

ソーダ長石85
カオリン15

4  乳濁させるための添加剤
   (錫・ジルコン・骨灰など)を入れる。
乳白釉

珪石10
石灰15
長石50
ジルコン5

5  アルミナ系の原料(カオリン・陶石等)
   を多くしてマットにする。
蛙目釉

長石70
土灰30
蛙目20
骨灰7

    

Q7 では、色釉はどうやって作るのか?
A 基礎釉(透明釉やマット釉など)に着色金属を加えます。

主な着色金属
青・黄・茶・黒など 青磁釉・黄瀬戸釉・飴釉・黒釉など
緑・赤・紫など 織部釉・トルコ釉・辰砂釉など
コバルト
青・黒など 瑠璃釉・黒釉など
マンガン
紫・黒など 瑠璃釉・黒釉など
クロム
緑・桃・茶など 緑釉・桃釉・茶釉など
以上のような酸化金属を、それぞれの釉に合った組み合わせと分量で加 えます。


 

おわりに

これは、釉薬に関するほんの導入部分に過ぎません。 様々な成分が複雑に作用し、更には焼成の影響も受けて焼き物は出来上がります。 陶芸家は数えきれない実験と失敗と、少しの成功をくり返して学び、そして修得していくのです。

しかし、どんなに科学的な知識が豊富で釉薬をコントロールする事が出来ても、それを見極める感性と、表現する技術がなければ良い作品は出来ません。 作り手として一番大切なのは、やはりそういった部分ではないでしょうか。

皆さんそれぞれのペースで、是非これからも陶芸を楽しんでください。

noda


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